ふぃじかるの日記

おっさん 1ねんせい の にっきだ !

代表選考

新婚旅行にバリへ行くことにした。

理由は正直特になくて、なんとなく南国に行ってみたいのと、ハワイが時期的に高いといからというものだ。南国に旅行したことなかったし。

 

諸々の準備を進めている12月初頭の段階で、バリのアグン山が噴火し、空港が閉鎖された。火山については秋頃から噴火のニュースで知っていたけれど、正直かなり心配だった。3日ほどの閉鎖を経て再開されたときには、だいぶほっとした。

 

いよいよ明日に出発、荷造り始めることにした。そこでちょっとした問題があった。

問題ってほどのこともないんだけど、子供の頃から俺は荷造りが苦手なのだ。何を持って行くかリストに書き出し、一つ一つチェックしていく。そこまではいい。しかし、いざ荷造りの段になると突然不安になってくる。

 

子供の時、長期の旅行に出かける準備をしていた俺は、明らかに旅先に必要でないゴジラのフィギュアやミニカーを詰め込みたくなった。母親に許可を求めたが、まったく取り合ってくれない。旅先では何が必要になるか分からないとはいえ、荷造りを必要最低限で済ませるのは常識だ。少年の俺は泣く泣くお気に入りのおもちゃたちを置いて旅行にでかけた。かなりの罪悪感を抱いた記憶がある。映画「トイストーリー」のように、置いていったおもちゃたちが悲しむのではないか…そんな可愛い思想のもと、ついお気に入りのおもちゃを荷物に忍ばせたくなるのだ。

もちろん、旅先でそれらのおもちゃが必要になったことはない。そんなこと忘れて思い切りエンジョイしていた。

その罪悪感は、ある意味一過性の病気のようなもので、荷造りの段にのみ発症するものだ。

 

今回も1週間ほど我が家を離れることになり、同じ病気が発生した。いつも着ているお気に入りの服を置いていけないのだ。

バリは南国で、必要な服も限られる。しかし、常用しているジャケットやチノパンを全て置いていくことに、とても抵抗を感じてしまう。

スーツケースの容量は限られるのに、「あれも、これも」と欲しくなる。

 

そこで今回、齢31にして少しやり方を変えてみることにした。

一旦必要だと思うものを全て荷物に詰め、そのあと明らかに持っていくべきものでない物を取り出していくのだ。

早速荷造りしてみると、当然スーツケースは満杯になっていく。それでも構わず、とにかくスーツケースの上に服を積み上げていく。巨大なミルフィーユみたいな荷物が完成した。とりあえず満足だ。

今度はそのミルフィーユを一枚一枚剥がし、取捨選択する。

ここで妙なことが起こる。一旦満足したからか、剥がしていく作業が妙に楽しい。いくつかの種類のボトムスから色を一つ選ぶ。ハーフパンツ、ジーンズ、チノ…一つずつの代表が出揃うと、今度はトーナメントだ。生地の厚いチノやジーンズは、早々に脱落し、南国バリに同行する代表選手が残っていく。服だけでなく、スピーカーやタブレットなども、同様に選考していった。

最終的にはかなり妥当と思われる荷物のみが残った。美しい。本当に美しい代表たちだ。そこには、ミルフィーユを作った時の何倍もの恍惚にひたり、満足している自分がいた。

 

こうして今、満を辞してバリに乗り込んでいる。この荷物たちならどこに行っても通用するだろう。

 

だけどさっき、ビデオカメラのバッテリーを机の上に忘れたことに気づいた。

そんなもんだ。